Wednesday, April 30, 2008

日記 2008/4/29



・買いだめしていた文芸誌から、かいつまんでいくつか読む。

・早稲田文学復刊1号掲載の川上未映子「戦争花嫁」
例の芥川賞受賞作は読んでいないが、本作は相変わらず詩的で、いったい何のことだかわからない「戦争花嫁」について書かれている。その不思議な言葉そのものにつて、言葉のもつ強度や速度が語り、炸裂する散文。世界、そしてその存在を受け止める目、語られる言葉。その言葉を発語すること。その耐え難さ、厳しさを戦争花嫁は引き受け、烈火によって昇華させる。言葉を捕まえ、その言葉となる。川上の鮮やかな手つきが刻まれた佳作。

ところで、早稲田文学の雑誌デザインは面白く、「アラザル」のデザインの参考にさせてもらった。最終的には直接的な影響は出ていないけれども。

・新潮2008/5掲載の東浩紀「ファントム、クォンタム -序章-」
量子コンピュータなどを題材にしたSF作品の序章。先日のエクス・ポ ナイトでも話題に上がっていたが、「ゲーム的リアリズムの誕生」の実践として書かれた可能世界論的な作品。批判的な意見も聞いていたが、僕としてはとても面白く読んだ。まさに可能世界を行き来するSF作品であり、今後の展開が楽しみだ。ちなみに途中で文芸評論家「浅谷公人」というのが登場して笑った(もちろん浅田彰+柄谷行人だろう)。僕が気づいていないだけでこういうフェイクは多分他にもあるんだろうな。

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