Wednesday, September 24, 2008

最近見た展示

いくつか展示会を見てきたので報告。

■パラレル・ワールド展

http://parallelworlds.mot-art-museum.jp/
パラレル・ワールド展

「平行世界」をテーマに掲げた展示で、どちらかというと可能世界論的な、有りうべきもう一つの世界というよりは、私たちに認識を転換することで現在の世界が別様にも捉えられることに主眼を置いたような作品が並ぶ展示で、そこそこ面白かった。が、ちょっと全体的に散漫な印象というか、広い空間を使った展示である分、そこがまさに平行世界として成立するような、日常からはなれた空間を作ろうとしていたのかもしれないが、そこまで成功していたようには感じなかった。

その中で印象的だった作品をいくつかあげると、フランスの作家ダニエル・ギヨネのアニメーション作品は我々の身体の内面と、世界の接合の仕方を問うような、あるいは身体の自己同一性や境界とは何なのかを考えさせるような、しかしコミカルなもので、とても気に入った。アルトーの器官なき身体を強烈に意識しているだろう。腕や胴がそれぞれ切り離されては接合し、溶け出し、内側と外側がひっくり返ってまた戻ると言った荒唐無稽な動作の中に、優れて批判的な視座があった。

またローランド・フレクスナーの墨のシャボン玉を使った作品は、カオス理論を使ったCGとも似た、繊細であり、かつ物理現象としての強度を備えた優れたものであった。





えーと、他には写真美術館で『液晶絵画』と、『Visions of America 第2部』を見てきたが(あと現代美術館の常設展も見た)、今日のところはここまで。

Monday, September 15, 2008

近況

ずいぶんと更新してませんでしたので、最近の近況報告を。
しかし、一体誰に対しての近況報告なのか、という点に関しては依然として不明。

■映画
宮崎駿『崖の上のポニョ』
押井守『スカイ・クロラ』

■ライブ
Direct Contact vol.2 (1日目、3日目)

■展示
世田谷美術館 ダニ・カラヴァン展(イベントとして大友良英他のライブ)

■本
古川日出男/『LOVE』、『ベルカ、吠えないのか?』


あれ、こんなもんか。もう少しは見てた気がしてたけれども。
少なくともここに上げた作品はどれも良かった。

『スカイ・クロラ』はつい昨日見たのだけれども、これは最近見た映画の中で特に印象に残る作品であった。僕は少なくとも意識して押井守の作品を見たことは皆無で、だから今回の映像を見て、あ、この感じの映像作品を作っているのが押井守だったのか、ということに遡及的に気づいたくらいな訳だが、映像、そして物語の展開と各シーンごとのタイミングの感じ等、色々思うところがあった。
そして、やはりアニメーションとしての作品の完成度の高さはさすがである。僕はアニメーション映画についての知識はほとんどないようなものなので、本作の映像のクオリティに関してどのように評価されるべきか詳しく理解できる訳ではないが、しかし3DCGのシーンの完成度と、2Dアニメーションのシーンとの接続、あるいは同居の滑らかさは、もはや手書きであることやCGであることの意義を無効化してしまっているように感じた。
で、今スカイクロラのサイトから予告編を見てみたんだけれども、これ、本編見る前には見ちゃダメだな。色々だしすぎだ。うーん、本編の完成度は高いのに。予告編も押井守が作っているのだろうか?違うと思うが、もうそうだとたらちょっと考えものだ。

ダニ・カラヴァン展は舞台装置についての展示と、一つだけ大きな壁画風の作品がとても良かった。緻密で幾何学的で、そして作品が展示、あるいは上演される場と協調するための作品。そして閉館してからのイベントとして大友良英+Jim O'Rourke+Sachiko M+ユタカワサキのライブがあって、これもすばらしかった。彼らの演奏も、カラヴァンの作品群が展示される場と、それぞれのミュージシャンが発する音がそれぞれ作り出す音響空間が、展示場という場に様々な音色の勾配を作り出しており、刺激的な内容であったと思う。