Wednesday, June 04, 2008

日記 2008/6/4

・今日は仕事で午前中は横須賀の方まで。遠い。

・しかしその分本を読む時間ができるのはありがたい副作用。引き続きナイマンの『実験音楽』を読む。

第一章では実験音楽での記譜法について、実験音楽家たちがいかなる方法でそれまでの確定的な音の記述を避け、音楽を生成するルールの制作、つまりメタ音楽記述を行っていたかを詳述してあった。古典的な西洋音楽においては、楽譜に記されるのは発音される音(音程、持続、強度)を直接指定するものであるが、実験音楽の楽譜ではそれらの音を発音するためのゲーム的なルールが記述され、演奏家はそのルールに沿って演奏=playすることが求められる。しかしこの位相のずれは、例えばメディアの内容はメッセージであるが、メッセージとはまた別のメッセージのためのメディアであるという有名なマクルーハンの命題と符合する。結局作曲とは何であるか、あるいは音楽とは何であるかという命題が包含するべき領域というのは、それぞれの文化的コンテキストによって様々に変容するものだし、カルチュラル・スタディーズが問題にしてきたのもそのような文化の諸位相の多様性だろう。

・帰りにいくつかの書店を廻ってInterCommunication 65、新潮6月号、ユリイカ6月号『マンガ批評の新展開』、東浩紀×桜坂洋『キャラクターズ』を購入。

・しかし知ってはいたが、InterCommunicationは今号で休刊との事。僕は例えば現代思想などへの興味は、メディア論的な言説をInterCommunication経由で読み出してから持ったといえるし、だから批評に興味を持つことになったり、実際に批評的な何かを書くということについて間接的でも最も大きな影響を受けた雑誌は、僕にとってはInterCommunicationだといってよい。どうやらこの雑誌が最も重要性を持っていたのは90年代であったようで、僕が読み始めたのはつい最近(とはいえないか)の2004年からだから、その最もアクチュアルであったろう時期のInterCommunicationの需要のされ方はあまり伺うことができない。しかしバックナンバーをわざわざ購入して読もうと思うのも、扱う内容がアクチュアルであるが故、その陳腐化というか、そのままに受け取ることができない部分があっても、やはり何がしかの雑誌がもつ意志がこめられていたからだろう。休刊は非常に残念な知らせである。

InterCommunication 65

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